「地域連携事業で『自由研究』の出来上がり

筆者が所属する大学の学部は、人間の誕生から高齢までのライフステージを対象として、「こころ」「からだ」「くらし」を総合的にとらえ、「健康(health)」と「健幸(well-being)」を実現するための知識や技法を探究することを目的としています。学科は1学科で、コースはスポーツと福祉に大別されます。

一方、今日の大学の使命は、教育、研究および「社会貢献」とされています。本学部の特徴の一つは、学部が所在する市との地域連携事業です。2022年度の学部の企画数は39件で、企画実施回数は延べで192回でした。これらの活動の中で学生は、地域の子どもたちや高齢者の運動促進を図る取り組みを自ら企画したりするなど、講義だけでは学べない経験を積み、大きく成長します。こうした実践活動に関わることで、本学が取り組む教育、研究活動の成果を広く社会に還元し、地域が抱える諸問題の解決に寄与することも目指しています。

筆者は主にパラスポーツ等に関する事業を担当しています。その中でも小学生(障がいのある児童を含め)を対象とした事業「わくわくサマースクール」を紹介したいと思います。この事業は、パラスポーツ体験や障がいのある方との交流等を通じて、パラスポーツへの関心を高め、また、障がいに対する理解を深めることを目的としています。

2023年度は8月20日(日)に開催しました。活動内容は、ボルダリング、サウンドテーブルテニス(以下、「STT」:転がすと音が鳴るピンポン玉を用い、アイマスクをした状態で打ち合う競技)および障がいの疑似体験による支援方法を考えることでした。ボルダリングでは、パラクライミング世界選手権でメダルを獲得した日本代表選手が講師を務め、挑戦し続けることの大切さを子どもたちに話してくれました。STTでは、全国障害者スポーツ大会(正式名称)に参加経験のある選手が講師を務め、STTの技術指導だけでなく、視覚に障がいのある人への支援方法について話してくれました。

この「わくわくサマースクール」ですが、活動内容はもちろんのこと、子どもたちに配布する冊子タイプの資料が非常に優れています。表紙には小学校名、学年、組および名前を書く欄があります。次ページ以降はそれぞれの活動内容が記されており、子どもたちは体験して楽しかったことや感想等を書くようになっています。そうすることで、事業が終わった時には、立派な「自由研究」が出来上がる仕組みとなっています。

地域連携事業が「自由研究」に。これも一つの「社会貢献」と思いながら、子どもたちの楽しそうな笑顔が心に残る一日となりました。